滑面体の撮影
近年、電子化学の技術開発には目を見張るものがあり、それに伴う画期的なツールが販売され映像制作の分野に於いてもその恩恵を被っている。しかし、その反面、webやデジタルカメラが異常なまでに普及し、販売者自らが商品を撮影するケースが激増しプロカメラマンへの依頼が減少している事実も歪めない。従来のクライアントはそのスペースと機材を確保し、盛んに自作のスティルライフフォトグラフを展開しようとしているようで、そう言った方たちが共通して直面する問題点は、アイテムが滑面体(スペキュラーマテリアル)である場合、被写体の周りに有る物が全てを写しこんでしまう事態に悩まされることのようだ。長年に亘って静物体を撮り続けてきたカメラマンである筆者からすれば、被写体となる素材の質感を表現するためには、それが鏡面性を持ったものであれば周囲の何かが写り込むことによってその性質が表現できるものであり、その現象を取り除こうとする行為は、商品を撮影する基本を成す考え方としては邪道と言える。スティルライフの撮影は対象となる被写体の特性を常に直視し、それを如何に表現するかが重要なのであり、つまりは「何をどう写しこますか」例えばそれが庭園の美しい風景であったり、ドラマティックな窓から入射する太陽の光であったりすれば美しい滑面体の表現が出来たと言えるだろう。しかし、一般的なスペキュラーマテリアルの静物体の場合、スタジオ内に半透過性の白生地や黒ケント紙を用意し、様々な調整によってそれを写しこませる作業を日夜繰り返しているのが現状だ。つまり鏡面性を表すには何を用意してそれを如何に反射体とするかが問題であり、それを避けて通ろうとする考え方はスティルライフのカメラマンとしてのスタート点にも達していない初心者であると言える。ライトユーザー用の様々なキットが各メーカーから販売され、クライアント自らが写真の製作に当たれる時代が到来したかのような錯覚を受ける昨今であるが、まだまだ実現へのその道のりは遠いようだ。




