安易な虚像を信じる罠

撮影現場の設備の内容は近年急激な変化を見せており、それは技術の進化により映像を構成する光の情報をピクセルという画像粒子に置き換え、それを結集させる事により映像とするやり方が定着した為である。このデジタルシステムの発展は急速に進化し、従来のフィルムを使っていたアナログ撮影システムからそれへの移行をスムーズに行うことが当時は困難であった。その為に未だその流れに乗り切れないスタジオが多いように見受けられる。さて、デジタルのビジュアルシステムにはいろいろなメリットがあるが、その基本的な仕組みを熟知した上での作業しなければ混乱を招く。例えばこのページのテーマである接写撮影に於ける被写体と撮像素子との距離関係に現れる因果がそれである。画素数の多いCCD素子を使用すれば、広範囲の描写をした写真を予め用意しておき、その後必要な箇所をトリミングすれば接写と同等の画像が得られると考えるディレクターが多いが、被写体は感光部分との距離関係で立体がそのビジュアルファクターとしての存在を維持できており、例えば高層ビルを高く描写するためには焦点距離の短い広角レンズを用いて所定の距離に近づいて撮ることによってより高い建造物として表現できる。これはこの原理に基づくもので、小さな被写体を離れて撮影すればそのフォルムが持つ立体感は薄れ、突起性に欠けた写真となって仕上がる事を忘れてはならない。この点を忘れ、フィルムを知らない若い世代のカメラマンは入社当初からデジタルを前提として企画を練ることが日常となっている。そのため安易な考えで画像を捉えて表現すると、スタート時点のミステイクに気づかず徒労の研究家として終わりかねない。撮影スタジオの作業現場はフィルム時代の情報の集積の上に成り立つ言うことを忘れてはならない。